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「こんにちは、おじいさん」
「こんにちは、お嬢さん」
「おじいさんは目が見えないの?」
「ああ、見えないね」
「不自由はない?」
「十分世界を見たからね」
「そっか。おじいさん、いつも一人で海に来てるね。お嫁さんはいないの?」
「いたよ」
「お子さんは?お孫さんは?」
「いるよ。子どもは三人、孫は七人。みんな可愛い子達だ」
「そっか。幸せ?」
「ああ。とても幸せだ」
「……そっか」
「だがね、叶うことならもう一つだけ、願いがあるんだ」
「お願い?」
「これだけ幸せな人生だったというのに、欲張りなんだがね」
「どんなお願いごと?」
「ずっと昔に数日間だけ一緒に過ごした僕の人魚姫と、もう一度会いたいんだ」
「……」
「彼女が今どうしているのか。幸せでいるのか。それだけが気掛かりでね」
「……そうなの?」
「ああ。だから、元気そうな声が聞けてとても嬉しいよ、エリサ」
「っ」
「どうして地上へ?まあ、そんなことはどうでもいいや。できれば頬に触れても?」
「うん。いいよ、ツバサ。あのね、私もとっても幸せよ。だけどね、もう一度ね、ツバサに会いたくて……っ」
「ああ、ほら、泣かないで。こっちに来て?僕はもう君の顔が見えないから、傍に来てくれないと涙がふけないよ」
「ツバサ、ツバサ、お嫁さんが怒るかもしれないけど、もう一回会えて嬉しいよ」
「うん、僕もだよ、エリサ。だからほら、こっちに来て?」
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