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***稀にR15、同性愛表現があったり? 自己責任でお願いします
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一つ下の記事、ウェンティアより~の関連記事なので、2011年2月13日に作成した小話を引っ張り出してきました。
字下げしていないのが凄く気になるなう。




***


花の毒 7th


世界から必要とされなかった。確かにそうだった。うそいつわりなく、お前はこの世界に必要なのかと問われれば、いいえ、と答えただろう。あの頃は。
だから求められた時は嬉しくて涙が止まらなかった。はらはら、はらはら。男の子なのにどうしてそんなに泣くのと茶化す彼女の笑みは、角砂糖のように甘く熱い血肉へと溶けいった。甘い、あまぁい誘惑の味。

最初はそう、とても小さなことだった。お腹が空いたから木の実を食べたいの。お前、持っていないかしら?そう問われすぐにたわわに実る果実の育つ場所を思いついた。待っていて、すぐに取って来るから。そうしてとってきた実を差し出すと彼女は花が綻ぶように笑みを浮かべた。ありがとう、お前すごいのね。
もとめられたことも、肯定されたことも初めてだった。何を言われたのか分からず、理解した瞬間に喉の奥があつく痛くなって、勝手に涙が溢れたのだ。はらはら、はらはら。

それから彼女は毎日のようにやって来た。お花が見たいの。川で魚を見たいの。あの鳥を追い掛けたいの。洞窟探検をしたの。ささやかな望みばかり口にする唇に触れたいと一度指を伸ばしたことがあった。けれど栄養が足りずやせ細った体は皮膚もぼろぼろで、触れれば傷をつけてしまうような気がして止めた。この感情がいとしいだとか、いつくしむだとか、そういう風に呼ばれるのだとあの頃は知らなかったから、よく分からない曖昧な感情を持て余し戸惑っていたのをよく憶えている。

彼女は美しく成長していき、あまり会いにきてくれなくなった。仕方ないというのは分かっていた。きぞくのいえに産まれると、色々とぎむやきまりがあるのだそうだ。
それでもお付きの人間を撒いて会いにきてくれるとき、彼女はやはり必ず何か望みを携えていた。一番星のよく見える場所へいきたいの、朝靄の中で咲く花を見たいの、どうしても夜に光る虫を捕まえたいの。

かなえるよ。君の望みは、全部僕がかなえる。

最後の日。彼女はやつれたかおでぼろぼろに破れた服で会いにきてくれた。いとしいいとしい赤い唇。今は皮が剥けささくれているから、この指で触れても傷付ける心配をしなくてもいいだろうか。
ふれたい。どうしてもふれたい。
そう告げると、彼女はにこりと笑んだ。遠い日の綻ぶような笑み、それと似ていた気がする。そうじゃなかった気もする。どちらだろうか。僕は頭が悪いから、憶えていない。

代わりに名前を教えてくれと言われた。それは絶対にしちゃいけないと、誰かにきつくきつく言われていたからどうしてもできなかった。
なによ、わたくしの望みを叶えられないというのね、それならもういいわ。
そう告げて踵を返そうとする背中に、縋り付くように指を伸ばす。まって、まって、もうひとつだけ何かを望んでくれないか。きっときっと叶えるから、おねがい僕を置いていかないで。
くるり、と。彼女は花びらが舞うように破れたドレスの裾を翻しながら振り返る。
本当ね?本当に叶えてくれるのね?聞き返されて、こくこくと何度も頷く。君の望みなら叶えるよ、僕が全部叶える。だからお願い、何か言って。
せっかくの爪に塗った色が少し剥げている。あぁ、綺麗なのにかわいそうだ。桃色の小さな爪先、春に咲いて散る花のような。
色の剥げた爪先で頬を撫ぜられた。あたたかい。久しぶりに感じるひとの体温に、悦びを覚える反面怖くもなる。どうしよう、嫌われないだろうか。骨と皮ばかりの僕。


「そう言うのなら、叶えてちょうだい?わたくし、とても憎いの。憎くて憎くて堪らないの。こんな世界もう要らないわ、だから壊してくれるのよね?」


いいよ。約束したんだ。
かなえるよ。君の望みは、全部僕がかなえる。

涙が零れる。あぁ、誰かに必要とされるというのはどうしてこんなにも甘美で背徳的で幸福なことなのだろう。
唇が弧を描き、目が細まる。あぁ、僕は今、笑んでいるんだ。


「いいよ。君がそう言うのなら、このせかいをこわそう」


だからそれが終わったら、あかぁい唇に触れさせてください。


***???、???
 
***

↓上記小話は、下記お題からタイトルをお借りしています。


Feburuary
白に狂う雨 / 雨音を泳ぐ / Good-bye,good-bye,good-bye. / あなたを神さまと呼ぶのはもうやめた / たまに遇う秘密 / 心臓よりも奥底にあるとすれば(それは) / 花の毒 / くゆる ゆらゆら / 水底の空 / 星のない夜に / 鈍色が虹を染めるなら / 羅針盤に憧憬 / イデアとロゴス / あの暖かな月を壊す 弱さをください。 / 音をなくした世界に / 溺れるものの存在は / 求め 与う(幸いなるかな) / なにも、そして / てのひらに残像 / 海に宿る / 心臓よりも近い場所で、独占していて / 手紙につめたクローバー、届きましたか? / 深緑には程遠く / くるみ色の夢の切れ端 / あくる日の白濁 / ミルクポットのラプンツェル / 細糸で首をくくる みたいに / トワイライトルビー / あなたの爪が届くところ、に


from 星が水没

 
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